インスタント人間

2021年11月22日

今更言うまでもないですが、スマホって便利ですよね…SNSや動画サイト、我々の様々な欲求を満たしてくれる万能アイテムです。

もうスマホの無かった生活に戻るのは中々難しいでしょう。

便利よ便利、とてもとても便利よ!とても!

とはいえ、便利なものには良い面と悪い面の両極があります…プロメテウスの火、諸刃の刃、使い方次第で利にも害にもなります。

昨今では「スマホ脳」なんて書籍も話題になり、スマホ依存による問題が色々と囁かれますが、では実際にスマホ依存が我々にどういう影響を与えるのか?スマホ依存に陥った人間はどのような行動を起こしやすいのか?

ちなみに、私はスマホ依存に陥った人を「インスタント人間」と呼称します。

今回はそんな「インスタント人間」たちにフォーカスを当てて、探っていきたいと思います。

スマホ依存が脳に与える影響

さて、正直コレ系は色んな専門サイトでも詳しく解説してはいますが、一応私なりにも簡単に説明しておきます。

と言うわけで、いってみましょう!

脳の情報処理

我々人間は入ってくる情報を、大脳の前頭葉にある前頭前野ぜんとうぜんやと言うところで処理しています。

前頭前野は主に、「思考」「記憶」「理性」などの論理や情動、理性など人間が人間であるために必要な、最も重要な働きを担っています。

前頭前野での情報処理は以下のように行われます。

前頭前野の情報処理

【情報のインプット(見聞き)】

【情報の整理】 

↓ 

【情報のアウトプット(話す、書くetc…)】

ここで重要なのが「情報の整理」です。

脳には、ぼんやりしている時に活性化し、情報の整理を行う回路があり、これを「デフォルト・モード・ネットワーク」と言います。

情報の大渋滞で脳過労

前項で「情報の整理が重要」と書いた通り、人間には頭をぼんやりさせて「デフォルト・モード・ネットワーク」を活性化させ、情報を整理する時間が必要です。

言うまでもなくスマホは我々に膨大な情報を流し込んできます。

SNSでの不特定多数の発言、NEWSサイトで目に映る数々のトピックス、広告、逐一舞い込む通知情報etc…

スマホをただ見るだけで洪水のように情報をインプットしてしまいます。

インプットした情報をきちんと整理しなければ、正しいアウトプットが行われず、情報が大渋滞し脳過労へと繋がります。

「つい何気なく」は無目的のゴミ

ちょっとした合間に、つい何気なくスマホに手が伸びてしまう人も多いでしょう。

この「つい何気なく」が曲者であり、脳を疲弊させる習慣とも言えます。

「つい何気なく」入ってくる情報は、まさに「無目的の情報」で、無目的の情報は整理しにくい為、脳に渋滞を引き起こすゴミとなりやすいです。

人間らしさの欠落

インプットに次ぐインプット、更にインプット…デフォルト・モード・ネットワークが働く前にインプットばかりしてしまうと、脳に整理できていない情報のゴミが大渋滞を引き起こし、脳過労に陥ります。

その結果、前頭前野の働きが著しく低下し、言動にもその影響が出てきます。

前頭前野は人間が人間であるために必要な働きを担っていると書きましたが、その働きが低下すると言うことは…そうです、脳過労による前頭前野の働きの低下は…人間らしさの欠落と言えます。

脳過労の影響で、具体的には以下のような症状が現れると言われています。

・物忘れが増える
 人や物の名前が出てこない
 忘れ物が増える
 数秒前に何を検索しようとしていたか思い出せない
 
・思考や情動のコントロールが出来なくなる
 イライラしやすくなる
 キレやすくなる
 急に怒鳴る
 人前で不必要にアガってしまう
 やる気が出ない
 複雑なことが理解できなくなる
 単調で簡単な快楽へ流されやすくなる
 短絡的で突発的な行動に出る

・自律神経の乱れによる体調不良
 疲れやすくなる
 便秘
 不眠
 腰痛
 冷え
 倦怠感

等々…思考能力が低下し、何事にも短絡的になりすぎる傾向があり、身体も不調を訴え始めます。

こうなると社会生活に不具合が出てきます。

これらの症状が鬱病などを誘発する場合もありますので注意が必要です。

インスタント人間の生態

先の章が「スマホ依存が脳に与える影響」でした。

このスマホに依存に陥った人を、依存症の症状から総括して、安易な情報=インスタントな情報に流されやすい状態にある人間、「インスタント人間」とします。

さて、この「インスタント人間」になってしまったら、どのような事になるか、スマホ依存の症状を踏まえて見ていきましょう。

インスタント人間は情報の精査ができない

「インスタント人間」は正しい情報の精査が出来ません。

スマホ依存の症状である思考能力の低下によって、SNS等、ネットで触れる情報の信憑性を正しく判断できなくなっているのです。

前提として「インスタント人間」はスマホ依存によって、頭がパッパラパーです。

加えてクリティカルなのはスマホは物理的に小さい事です。

PCのようにブラウザタブを同時にいくつも開いてどのサイトがより正確で偏りのない情報を掲載しているのか見比べる事も出来ませんし、まずインスタント人間はしようともしません。

スマホ依存によって思考能力の低下に加え、スマホでは情報の取捨選択が出来ない…これが負のスパイラルを巻き起こします。

インスタント人間はネット上に散らばる情報の中から、自分にとって都合の良い情報が真実だと思ってしまいがちです。

更に陰謀論などのような、世の主流から外れたアンダーグラウンドな情報を好んで信じてしまいます。

なぜ陰謀論を好むのか

どうしてインスタント人間は陰謀論を好んでしまうのか…

まずインスタント人間は複雑な物事が理解できない上に、安易な情報に流されやすく、常に「自分にとって都合の良い簡単な答え」を欲しがっているので、何にでも影響されやすいです。

そして陰謀論は複雑な世の中に簡単な答えを提供してくれるのです。

それはこの世の中の「黒幕」です。

世の中の出来事は色々と複雑な事情が絡んでいて、ひとつの事象もひとつの要因からなっている訳ではありません。

色んな人の、色んな思惑や事情、それぞれの行動が絡み合い、世の中を作り出しています。

この世の中は一見複雑そうに見えても実は一本道で繋がっているアミダくじの様な単純な構造ではなく、入口と出口が一本道で繋がっておらず、様々な影響を受けて、絶えず道筋が変化し続けているのが現実です。

結局、たったひとつの元凶である黒幕なんて存在しないのですが、インスタント人間にはそれが理解できません。

自分たちが今置かれている状況、日々の不満、行政の待遇から、果ては己の所得の低さまで、自分にとって都合の悪い状況を作り出している元凶、悪者を特定しないと納得できないのです。(というか理解できない)

自分の置かれた状況を自ら改善しようともせずに「無い物ねだり」しかできません。

そこへ、陰謀論などの「黒幕がいるぞ!」って話に食いついて、それこそ真実だと思い込みたいのです。

そして安易に陰謀論を信じてしまったり、政権批判などに走ります。

そうして、様々な陰謀論的な意見を自らもSNS等で発信してしまい、承認欲求や自己顕示欲が己を扇動し、最終的に引くに引けない状況に陥り、どんどん突き進んでしまいます。

デマなどを簡単に信じて拡散しまうのも、インスタント人間特有のこういう心理の働きです。


「コロナはメディアの陰謀」とか「ノーマスクデモ」とか声高に叫ぶ人たち、彼らも発端はSNSでの繋がりであると思いますが…彼らのTwitterとか見てみると、なんだか「多角的に見て真実に気づきました!」的な事を述べてる人が多いですが…

以前も述べましたが、「今現在、マスクをしていない人間を見ると不安に思う人がいる」っていう考えにすら及ばず、他人の為にマスク一枚すら着けられない人間のどこが「多角的」なんでしょうか…その多角に「他人の気持ち」は含まれていないのでしょうか?

私はメディアに踊らされない!的な心情もあるのでしょうが、デモとかに参加している時点で、十分踊ってます。

滑稽なほどに。

禁断の書物を手に、神と出会う

インスタント人間はインスタントな陰謀論に流されやすい、その大まかな原因を述べてきました。

中でも厄介なのは、無目的な情報を節操なく取り込んでいるので、自分は賢い、自分は他とは違うと思い込み、自分がスマホで見ている情報源は選ばれし者だけが閲覧できる禁断の書物か何かだと勘違いしている節がある事です。

一応言っておきますが、普通の人はわざわざそんなものは見ないだけです。

加えてインスタント人間達は外に答えを求める生き物なので、己の内に意見など殆ど持っていません。

そして、自分に答えを与えてくれる存在に依存する傾向にあり、ネット上で都合の良いことばかり並べ立てた発言を目にすると「金科玉条を得た!」とばかりに発信者を盲信し、神の如く崇めます。

そしてカルト宗教の勧誘よろしく、現実世界でも他人にその神のお告げであり、受け売りの腐った知識を押し付けます。

そしてネットで得た腐った知識を自分の知恵と勘違いし、身近な人間を見下し、身近な人間の意見は決して聞き入れようとはしません。

端から見ると単にウザすぎて、恥ずかしいだけなので、インスタント人間のみなさんは注意が必要です。

要約に答えを求める

インスタント人間は要約サイトや、映画本編を切り貼りして編集した、所謂いわゆるファスト映画と呼ばれる物も好む傾向にあります…

要約などを見て短絡的に「見た気」になれる「知った気」になれる、これこそ「インスタント人間」の象徴とも言えるのではないでしょうか。

昨今なんでもかんでも「時短」とか言われますが、時短していい物とダメな物があります。

「手間」は時短して良いでしょう、しかし、「作品」は時短すべき物ではありません。

映画や、小説その他の数多くの作品は、スポーツ競技やビジネスなどのように「結果」という答えを求める物ではありません。

あまねく作品という物は、導入から結末までを通して物語ストーリーを観る」ものです。

物語ストーリーを観るという事は、最初から最後まで、全体と部分の相互関係を把握しながら観るという事です。

そこで初めて内容も理解できますし、作品という物は「作り手の想いを如何に受け取り、どう感じるかのセッション」であって、受け手によって印象や感想も変化する流動的な物です。

つまり作品という物に、ひとつの答えは存在しません。

それなのに、手っ取り早く結末や、美味しいところだけをつまみ食いしても何の意味もありません。

どんなに芸術的価値の高い絵画でも、その一部を切り取った物を見て何がわかるのでしょう。

それでもインスタント人間達は、映画だけではなく、小説や、あまつさえ漫画までも要約した物を見る。

これは作品を通して見ることを「手間」だと思っている、また通して見ても理解できないということです。

作品に対しても「簡単な答え」だけを欲しがります。

そして「見た気」「知った気」になりたいだけなのです。

なんとも浅はかで、薄く、軽く、愚かな事でしょう

時短のつもりなら、最初から要約なんてものを見ないのが一番の時短です。

何にも得るものがないし、感動もない、そんな物を見るのは時間の無駄だからです。

作品はお金と時間を対価として差し出して観る。
それが出来ずに要約した物だけをタダで消費するのは全てのクリエイターへの冒涜です。

思慮の欠如からの誹謗中傷、〇〇警察

近年問題になっているSNS等での誹謗中傷ですが、これもインスタント人間ならではの思慮の欠如から起こる事です。

インスタント人間は思慮の欠如から、自分の言動で相手がどう思うか、その結果相手がどういう行動を取るか、また自分に何が返って来るかを想像する事が出来ません。

スマホの先に相手が実在するという事も実感として湧きにくいのでしょう、「匿名」を隠れ蓑に、歪んだ正義感や妬み等によって浅はかなコメントを指先ひとつで送り付け、後になって事が大きくなるとやっと焦り出すのです。

匿名だろうがなんだろうが、人に投げかけて良い言葉とダメな言葉の判別もできない、とても困ったちゃんです。


このコロナ禍が生み出した「自粛警察」などの〇〇警察や「県外ナンバー狩り」と言われる行為も、インスタント人間のもうひとつの顔と言えるでしょう。

短絡的に怒り、焦燥感に狩られ、突発的に後先考えず窓ガラスを叩き割る等の暴挙に走ってしまう…思慮が働かず自分に抑えが効かないのです。

感情のコントロールができないので、一度ひとたび怒れば、怒りに飲み込まれてしまうのです。

インスタント人間の特徴

さぁ、ここまでスマホ依存症が引き起こす影響と、インスタント人間の生態に迫ってきましたが…インスタント人間の特徴をザッとまとめてみると

・正しい情報の精査ができない

・何にでも影響されやすい

・常に自分にとって都合の良い答えを求めている

・答えを与えてくれる存在に依存する

・陰謀論に流されやすい

・デマを信じやすく、拡散しやすい

・自分が信じるものを他人にも強要する

・ネットしか信じず、身近な人間の意見には耳を貸さない

・要約が大好き

・軽薄で、にわか大王

・思慮が足りず人の気持ちが理解できない

・感情が抑えられず、後先考えずに暴挙に走る

という感じになりますかね。

自分や親しい人間がこうなると中々キツいと思います。ホントに…

もちろん、ここで取り上げたインスタント人間の傾向は、あくまで例えのケースです。ここに挙げた全ての特徴を備えている人もいるかもしれないし、そうではないかもしれない…インスタント人間といえど個々人を取り巻く環境によってその行動は変わってくるでしょう。

インスタント人間にならないために

さて、この章で「まとめ」とさせていただきます。

インスタント人間の厄介なところは、もし自分がインスタント人間になってしまっても「自覚しにくい」という点です。

ですから常日頃、スマホから溢れる情報の洪水から自衛する習慣が大切です。

近頃は「デジタルデトックス」なんて言われてたりもしますね。

第一にぼんやりする時間を作る

まずはなんと言っても、ぼんやりとする時間を作って「デフォルト・モード・ネットワーク」を活性化させ、情報の整理を行う事です。

インスタント人間になってしまう最大の原因は、整理されていない情報のゴミです。

ゴミはきっちりと整理しなければいけません。

ぼ、ぼ、ぼ…ぼんやり…

散歩がおすすめ

私個人が実践していることで言えば「散歩」がお勧めです。

仕事で頭をフル回転させてもアイディアがまとまらない時などは、とにかく散歩に出ます。

脚本を書いている時にありがちですが「このシーンを違和感もなく、無理なく進めるには…」と台詞ひとつや、状況ひとつ作るのにも「こうしたらあっちが立つけど、こっちで矛盾が出てしまう」なんて事に頭を悩ますことは多々あります。

そういう時は余計な情報(特に無目的な情報)は頭に、目に入れないように、ただただ歩きます…アイディアをまとめようとも思わず、ひたすら歩くだけです。

で、散歩から帰ってきてシャワーを浴びている時に、フッとアイディアをまとめる新しいアイディアが湧いてきたりします。

これは「デフォルト・モード・ネットワーク」が上手く機能してくれたおかげです。

情報を意図的にシャットアウト

情報をうまく扱うには、情報のシャットアウトも必要です。

仕事で疲れている時に、休憩時間に暇つぶしにスマホを見る習慣がついてしまうと、無目的の情報の積み重ねによって自覚がなくとも頭はキャパオーバーに陥ります。

休憩中はなるべく頭も休憩させてあげましょう。

他にもルーティン化している、トイレ中のスマホとか、電車移動中のスマホとか、ベッドでのスマホとか…できる範囲でどれかを止めてみる。

とにかく「スマホを触らない時間を意図的に作り出す」これが肝要です。

見るなら脇目も振らず、目的を持って、

一番ゴミになりやすいのは、何気なくスマホを見ている時に流れ込んでくる「無目的の情報」です。

これは頭の中を煩雑に散乱させてしまう「散らかし係」です。

必要のない情報は取り込まないようにしましょう。

スマホを見るなら明確な目的を持って見て、目的を終えたらぼんやりしましょう。

ついつい興味を惹かれて関係ないトピックスをタップしないように注意です!

スマホは悪くない

今回はスマホを取り上げて説明しましたが、これは便利で簡単に手元で操作できるスマホが依存しやすい、というだけであって、他にもインスタント人間になる原因は沢山あります。

PCでのネット閲覧、TV、漫画etc…これらも「暇だから」と無作為に過剰にのめり込み、依存状態になると「インスタント人間」を生み出します。

何にでも依存してしまうと、盲目的に情報を過剰摂取し、脳過労が起こります。

なんでもほどほどに…

スマホはとても便利な物なので、正しく使えばなんてこたぁ無いのです。

便利だからこそ、上手に付き合いましょう。

スマホが無いと何もできない、スマホがないと中身が空っぽな人間というのも虚しいですよ。

スマホを使っているつもりでも、気がついたらスマホに使われてた…なんて事の無いよう…

という感じで、今回は以上となります。

ではまた!良い人生を!